Music 2009 02

ジノ・ヴァネリジノ・ヴァネリ

The Gist Of The Gemini
Brother to Brother
Nightwalker

今では、リズム系は打ち込みが当り前のような感覚だけど、どうしても打込みではグルーヴ感を表現しにくくて困るのよね。これは職業としてのドラマーにも死活問題よ。中途半端な実力だったら打込みの方が上なんて声も現場ではよく耳にする。

確かにサンプリング音源も良くなってるし、解像度も向上して一昔前と比較したら格段にマシンも腕前を上げてるわ。人間では決して真似できないリズムも叩けるし・・・。

そんなシーケンサー全盛を迎える前のアルバムを聞くと生のリズムが非常に新鮮に聞こえるの。例えば、メローな旋律とタイトなリズムで魅了したジノ・ヴァネリ。全盛期の彼のアルバムはリズムが強力なのよ。特に「The Gist Of The Gemini」「Brother to Brother」「Nightwalker」の3枚がお気に入りよ。

ドラムは手数の多いパワフルながら歌と同期した素晴らしい間合い。マシンには絶対に再現できな職人芸・・・。人間の持つ感覚はまだまだマシンでは到底追いつく事のできないレベルをまざまざと感じるわ。決してマシンを否定する訳ではないのですけど、リズムの感覚を狭いの領域に押し込めて、音楽そのものをつまらなくしたのも事実。

あるレコーディング現場で驚きの事実に遭遇したのよ。若いアレンジャーが打込みの世界しか知らなくて生音のリズム録りの経験がなく、何をすればいいのかわからなくてパニックに・・・。こんな時代になったのかと唖然だったわね。

音楽の原盤製作費が削られ、安くて、ある程度の制作レベルならOKという今、このような人達の登場もうなずけるわ。だからこそ、生音の大事さを広めないといけないと痛感した次第よ!

あ、せっかくジノ・ヴァネリの名盤を紹介しようと思ったらすっかり別のお話になっちゃったわ。素敵なアルバムですから是非お聞き下さいね~。

nightwishNightwish

END OF AN ERA (DVD)

シンフォニック・メタル・バンド「Nightwish」のライブDVD『END OF AN ERA』は色んな意味合いで圧巻と言っていいかも・・。爆発的なヒットとなった2004年のアルバム「Once」のツアーを収録したもの。彼らの今迄の総売り上げは2008年までで350万枚と半端じゃないわ!

耳にした最新作「Dark Passion Play」での新生NWの女性ボーカルはABBAの如きキュートな声の持ち主だけど、この当時ボーカルを務めていたターヤはまさにオペラの歌姫!ベースのマルコが発するへヴィなボーカルと彼女の美しく澄み渡る歌声は見事なバランスを保ち、火と水が共存しているよう・・・。

そしてリーダーでありキーボード奏者のツォーマスが生み出す、映画音楽の様な重厚さとへヴィさを兼ね備えた楽曲は一大叙事詩!歌詞の内容も彼らの母国フィンランドの壮大な景色や歴史がベースになっているから、日本人にとっては”ロード・オブ・ザ・リング”のような印象かしら。

ターヤがいないとステージ上は只の男臭いメタルバンドに見えるんだけど、彼女が現れた瞬間一気にオペラハウスに変化し、最前列のターヤ・ヘアーを真似た少女達はヒートアップして泣き出す始末。どのパートも半端無い技術と実力があるし、長い間培ってきた民族の血や世界観が根付いているから幅広い年齢層に受け入れられるのかもしれないわ。

日本では・・・うーん、考えられないなあ。そう言う意味合いでも日本は平和なのかもしれないわね。雪が森を舞い、寒さから身を隠すように生きる人々・・・責め、そして責められ、滅亡と復活の繰り返し・・・そこで生まれる神話・・・そういう情景がないと、こういった音楽は生まれないのかも。

オーケストラとへヴィ・ロックの融合をこれほど絶妙なバランスで形作ったNWは本当に素晴らしい!地球には沢山のシーンや歴史があるのだからそこをもう一度見直して煮詰めていったら面白いものが生まれるはずよね。しかし・・このバンドを知れば知るほどその取り組み方や意気込みには恐れを感じる程の凄さがあるわ。レコーディング、参加ミュージシャン・・とにかく目が離せない!また改めて紹介するわ。

--Nightwish日本語ファンサイト-
www.nightwish.jp

ビョークビョーク

Live at Shepherd's Bush 1997 (DVD)

ビョークの1997年ライブを見た!・・・というか遭遇してしまった!

このライブはファンクラブ限定で行われたそうで、ハコ的にもこぢんまりして良い感じ。彼女の衣装やヘアメイクも、この回がベストと言って良い程よく似合ってるわ。ステージにはドラム、キーボード、プログラミング、ライブミキシング、そして日本代表アコーディオニスト"Coba"という異色の構成よ。

とにかくドラムのTrevor Moraisのプレイは神懸かり的で、ボーカルを肉体全体で理解しようとしている感じが素晴らしい!短いドレッドを振るわせ半ばトランス状態でエモーショナルに叩き上げる姿は一見の価値ありよ。そしてCobaもビヨークの無機質トラックに見事に息吹を与えていたわ。

このライブは2ndアルバム『POST』発売後のツアーなんだけど、改めてビョークの表現には感心させられるの。以前から思っていたけど、彼女はどこか土の香りがする・・・精霊というか、自然に"憑依された"依代と言うべきかもしれない。

鼻から抜ける低音、ビリビリと張り上げるノイズの如き高音を自在に操り言霊を伝えているわ。失礼ながらルックスはおばちゃん顔だし、体型もずんぐりちゃん・・・でもあの"ビョーク音"を身にまとった瞬間、どんなモデルの様な美女も彼女に太刀打ちできない事は確かよ!3枚のスクリーンに映像を投影する演出もどこかお伽噺話的で面白いし、見所が満載過ぎて満腹状態。音程が・・・間違いが・・・そんな事を気にしてばかりいる人にはお薦め!これぞライブよ!!

090210.jpgレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン

1st,イーヴィル・エンパイア

ピポ子がナウなヤング時代、その反骨精神や鋭利なサウンドスタイルで一世を風靡したバンドよ。

当初はそのエネルギッシュなステージに影響され、同じようなスタイルを目指すバンドが沢山現われたけど殆どが消えて行ったわ。それのそのはず!彼らは自分たちが辿ってきた歴史や思想、哲学を終始一貫して唱え続けているのだから、上辺だけ真似ている人間が太刀打ちできるはずが無い。平和な国で穏やかに暮らしてきた我々には想像もつかない血塗られた歴史や戦いがあるという事を、レイジの音楽を聴く度に思い知らされてならないわ。

最初の1音・・・初めてアルバムを耳にする時、この1音がどれだけのインパクトを持つかでそのアーティストの力量や世界観が決定されると言っても過言ではないけど、レイジはこの1音からズドン!と"落して"きたのよ。凝った事は何一つしていないのに、どっしりとした気持ちが良い重さが耳を捕えるわ。

更に、腰を据えた安定感抜群のボトムの上に載るトム・モレロのギターはバンドの顔!独創的なプレイは一度聞いたら「あれ?どうやってんの?」と興味を持たせるユニークなものよ。彼の父はケニア初の国連代表、母は公民権運動の活動家、本人もケニアの民族過激派の一員でハーバードで政治学を学び首席で卒業という経歴の持ち主で、常に政治と向かい合っていたの。

そしてボーカルのザックはやはり反戦活動家の母を持ち、トム同様政治的思想を強く持っているわ。彼の細高い声はあまり好きではないけど、このズドンとした音にあれだけのメッセージを込める訳だから丁度良いのかも・・・。ファーストアルバムである「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」、セカンド「イーヴィル・エンパイア」は今でもたまに聴きたくなるわ。

ファンク、ロック、パンク、ミクスチャー、ラップなんとでも呼べるけど、自分達の思想に対してこれほど真剣に考えている訳だから、"一本気思想極音"とでも呼ばせて頂こうかしらね。若者よ・・上辺だけを真似てもむなしいだけだ。己が生涯かけて表現すべきは何か、模索して参ろうではないか。

Music Review

2009 2
ジノ・ヴァネリ / Nightwalker 他
Nightwish / END OF AN ERA
ビョーク / Live at Shepherd's Bush 1997
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン / イーヴィル・エンパイア

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