Music2010-2011~6

100224.jpgNorthernKings

RETHRONED

最近は巷でカバーアルバムが流行っているようだけど、日本の作品はハッキリ言って・・生ぬるいわよ!

それを証明するかの様なアルバムがNightWishのボーカル、マルコを始めとするフィンランドのメタル・ボーカル四天王「NorthernKings」が2009年に発表したカバーアルバム『RETHRONED』

掟破りのアレンジで、色んな意味でオリジナルを超越してしまったわ!カバーしたアーティストは、Duran Duranやa~ha、SealにTHIN LIZZYと実に様々。どちらかというとポップテイストが強い曲をセレクトしているから、メタル変換するとガラッと変わるけど、最も度肝を抜かれたのはKylie Minogueの「Should Be So Lucky」ね!

あのKylie の可愛らしいボーカルは一気に闇に飲み込まれ、ホラー仕様の重い歌い出し・・ラッキーラッキーラッキー、と低音で歌われると、どうしたらラッキーなのかと疑問に思うほどよ。これはアレンジと言うより、既にNorthernのオリジナル曲ね!相変わらずのマルコの高音、重厚かつ広がりのあるサウンドは実にのびのびとしていて、彼らが楽しんでアルバムを制作したというのがよくわかるわ。

極めつけはシナトラの名作「マイ・ウェイ」・・ラストの「マーイウェーイ」と歌い上げる部分は、大げさになってしまうのが常なんだけど、彼らがプレイすると不思議と納得させられてしまう。これもやはり四天王の実力と風格であると再認識。

以前から気になっていたけど、フィンランドのアーティストはカバーをする事に対して非常に意欲的なのよね。好きな曲は好き、良いものは良い、そうやってお互いを認め合う精神が今日の北欧音楽シーンを作り上げているのだわ。曲本来の良い部分を活かしつつ、自分のカラーで作りかえる・これこそがカバーの醍醐味ね!

100225.jpgビョーク

メダラ(サラウンドヴァージョン)

サイデラマスタリングStudioのサラウンド朝活で"ビョーク"特集をお願いしたところ、「ビョークのサラウンドのボーカルミキシング&サウンドデザインをさぐる」というテーマで開催して頂いたので早速お邪魔してきたわ。

ビョークは早くから高音質と5.1chを意識した創作をしているから、サイデラさんのマスタリングシステムでどう聞こえるかが楽しみだった。

サラウンド"マッシュ"王子が、彼女のBOX・・その名も「サラウンド」を用意していて下さっていたので、その中から色々チョイスして聞かせて頂いたけど、やはり初期の作品より後期のサラウンドを意識した作品とではまったく聞こえ方が違ったわ。

一番凄まじかったのは、人間の声だけで構成された衝撃作「メダラ」!

どんな風に聞こえるか期待は膨らみ、その1曲目を再生した途端・・戦慄が走ったわ。どのスピーカーからどの音が出ているのか確認する為、参加者の皆さんは亡者のようにウロウロ。人間の口から躍り出るビート、悲鳴のような吐息のような息づかい、そして後方からヌッと現れる歌姫ビョーク。

帰宅後、改めてレコーディングのメイキング映像の様子を見直したのだけど、やはり彼女の音に対する探求心は神懸かりとしか言いようがない。頭の中で出来ているに違いない未知の音を探り、見つけているから・・。

名曲『Oceania』は楽器が入っている段階で、完璧な全体図が出来ていると言って良い位なのに、それを全て人間の声で置き換えようと言うのだから恐ろしい!実際完成した音源を聞いてみると、水中でのくぐもった音や水しぶきが見事人間の声で再現されていて、まるで水中に誘われたよう・・。イヌイットの喉を鳴らし歌やホーミー、そしてヒューマンビート・・歌とは、古来人間が神に捧げてきた神聖なものなのだと改めて思い知らされたわ。

様々な機材が進化し、ありとあらゆる事が可能になった今、"元祖人間"が自分の持ちうるもの全てを集結した結果「メダラ」の誕生!家庭でこの音を彼女の意図するまま再現するのは難しいかもしれないけど、アーティスト側の気持として、出来るだけ生々しい現場の音をファンに届けたいという彼女の気持ちが充分に伝わってくるわ。

どうしても、サラウンドって言うと一般的には映像の付属的な感覚で位置づけされてしまったので、ここで修正しないとね。音楽だけのマルチチャンネルって何かを体感できる機会を多くして、是非皆さんにもこのサウンドを体感してもらいたいわ!その為にもサラウンドを普及させないといけないわね!!

100212.jpgBlack Eyed Peas

Monkey Business

急に「Black Eyed Peas」の2005年発売のモンスター・アルバム「Monkey Business」を聴きたくなったの。

発売当時、このアルバムをあるエンジニアの方に初めて聴かせてもらったんだけど、良い意味で引っかかる部分が沢山あったわ。何よりジャケットのデザインが素敵で、直感的に『きっとこのチームは仲が良いんだろうな・・』と思えるような内側からの統一感を感じたのも不思議だった。同じ船に乗り込んだ海賊というイメージかしらね。

恐ろしい事にこのアルバムは、1曲目の名曲"ミザルー"をベースとした『Pump It』からラスト18曲目『Make Them Hear You』まで一気聴きをさせてしまうという逸品。ピポ子は、元々実存する音ネタを使って色々コラージュするやり方にさほど興味がなかったのだけど、今作をよくよく聴いてからは興味が沸いてきたわ。元ネタがあるだけに、かなりのアイディアやセンスがないと自分達のものには出来ないもの・・ふーっ、深い。

しかしこれだけ飽きさせずに最後まで聴かせきるのは、曲間のブリッジの部分と曲の並びが実に絶妙に計算されているからだわ・・無論各楽曲のアイディアや完成度が高いからなのだけど。お気に入りは、やや早足で攻めてきた後にひょっこり現れる暖かな日差しのような広がりを持つ6曲目の『Like That』や歌姫Fergieの心地よい伸びやかな歌声から始まる『Feel It』よ。

ジャック・ジョンソンが参加した『Gone Going』も海色一色ながらブラックフレーバーで粋な仕上がりになっているし・・自分がこんな感想を持つとは意外な気分よ。改めて思ったのは、こういうHipHopサウンドを心地よく聴かせる為に、言葉のリズムは実に重要ね・・遊び心も忘れてはいけないし。音作り、ビジュアル作りと新たな事に常に切り込んでいくBEPの4人。これからの彼らの航海は実に楽しみだわ!

20110228.jpg勝手にしやがれ

シュール・ブルー

昔新宿にあった老舗のライブハウス「リキッドルーム」でライブを行った時、ドラムセットの上に奇妙な人形飾ったドラマーが歌いながらドラムを叩いていたバンドと共演したことがあるの。そのバンドは気取ったスカバンドかと思いきや、男臭いサウンドで凄く印象的だったわ。彼らの名は「勝手にしやがれ」。

以前「ケモノヅメ」というアニメ作品のオープニングがあまりにも格好良くて心に引っかかっていたのだけど、それが彼らの音だと気付くまでさほど時間はかからなかったわ。ドラム兼ボーカルの武藤氏が無類のトム・ウェイツ好きであるというのが全面に出ているのが気になるけど、そのサウンドは男気一本!で潔い。

気になっていた曲は、2005年に発表されたアルバム「シュール・ブルー」に収録された『オーヴェールブルー』!初っぱなから緊張感漂うベースラインとその合間を流れ落ちるピアノ、アクセントの荒れ狂うホーンが秀逸よ。

歌詞の世界観もヨーロッパテイストで、黒いような青いような怪しい色合いの空と海が目の前に広がるの。まさにゴッホの描いた『オーヴェールの教会』そのもの!そういえば、このアルバム全体に登場するのは教会、シスター、マリアなのよね。己の退廃的な生き様に失笑しながらも、女達に許しを請うべき聖母の姿を重ね救いを求める・・そんな純粋な男の物語が見えてくるようよ。

その悲しさ、滑稽さが男性目線で描かれているのも凄く良い感じ。このところ日本のアーティストで男気を感じる人達は皆無だったけど、彼らの音を聞いてちょっと安心。ピポ子も男気サウンド推進派なので、負けてはいられないわね。生ぬるい音はお断り!のあなたに是非お薦めよ。

Music Review

2010 1-2011 6
NorthernKings / RETHRONED
ビョーク / メダラ
Black Eyed Peas / Monkey Business
勝手にしやがれ / シュール・ブルー

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