Art2009_10-12

091213.jpgアリス百花幻想 / 展覧会

残虐さとエロティシズム

クリスマスムード満載の銀座・・行きつけの画廊に立ち寄ると、「アリス百花幻想」という面白い展覧会が開催されていたの。

アリスをテーマに、約30センチほどの額入りカンバスに描かれた作品群が壁一面を飾り圧巻!作家陣も年末にふさわしく超豪華よ。カンバスのサイズはすべて同じだから、制約された中で作家の個性が光ってるわ。

"不思議の国のアリス"のイメージは可愛らしく好奇心のある少女であるけれど、今回登場するアリスは少女から大人の女性への過渡期を描いたものが多かったわ。大御所、宇野亜喜良氏は『ピーピングバード』というタイトルで鳥を抱えたアリスを描いているのだけど、鳥が首を伸ばしてアリスのスカートを覗こうとしているのよ。

ちょっとしたエロティシズムよね。

更に、目に見えないものをじっくり描いてしまう、敬愛する軽部武宏氏の作品『ひみつのことば』は実に繊細。カーキ、黒で塗り込められた背景がまるで森のようで、中央に描かれた鍵を持つ猫が神秘的に描かれ妖しい魅力を放ってたわ。

その他にもブラックでキュートな版画を得意とする山崎克己氏の「赤子販売機図」は和テイストで山崎テイストたっぷり。アリスが自販機で赤子を買っているという図柄はギョッとさせられるけど何故か和むの。その他にも漫画家の榎本由美さんのエロティックなアリスも目を引いたけど、見所が沢山で紹介しきれないわ。

入り口の黒いクリスマスリースに誘われるように、次から次へと訪れる女性客たち。やはり女性は"アリス"という題材に何かしら共感を得るのでしょうね。少女から大人の女性の狭間で見え隠れする、残酷で甘酸っぱい衝動・・これは女性でなければわからないかもしれないわ。是非今度描いてみよう!デブアリス・・。

091008.jpg横尾忠則、宇野亜喜良、和田誠、灘本唯人
/ 銀座界隈隈ガヤガヤショー(個展)

時代を創った4豪傑

銀座のみゆき通りを歩いていたら、黒い皮のライダースに鮮やかな色のシャツを合わせた白髪の紳士に遭遇。あまりにも強烈な個性に目を奪われていたら、彼はピポ子と同じ目的地である"ギンザ・グラフィック・ギャラリー"に吸い込まれていったの!

今回ここで横尾忠則、宇野亜喜良、和田誠、灘本唯人の豪華4人展「銀座界隈隈ガヤガヤショー」が開催されているので、こんな強烈な来場者がいるのも納得。

会場には所狭しと四天王が手がけた1960年代の芝居や映画のポスターから、"話の詩集"の生原稿などレアな作品が満載!特に気になったのは宇野氏の繊細でサイケな色使いの作品の数々よ。天井桟敷の芝居のポスターから企業のポスターまで、懲りに凝った緻密な線に込められた秘められたオリジナリティは圧巻。

この時代の作品が色褪せないのは、クリエーター達の生み出す線が生き生きしているからなのだと納得させられたわ。今のようにどんなに道具が進化しても、アイディアとセンス、そして表眼力がなければこれほどの作品を残せないのね・・。

現在目にする企業の広告はどれを見ても技術的に完成度が高く美しいけれど、味のあるものはそれほど多くない。60年代から70年代にかけての創意工夫や斬新な"挑んでくるスタイル"は超えられないのだろうか・・・。地下に展示されていた横尾氏の"LPを持つ手"が描かれたLPジャケットは、ケースから異様なほどのエネルギーを溢れさせていたし、当時の週刊少年漫画雑誌の表紙にもぎょっとさせられたわ。

今はグラビアアイドルが水着で表紙を飾るスタイルが主流であるけど、中央に大きく本の値段が描かれているだけのデザインや、連載されている作家陣の名前が1枚のデザインとして成立していたりと思わずため息を漏らす作品ばかり・・。

表紙は雑誌の顔であり、その部分に作家陣全員の息づかいを感じさせるべきなのに!買った人が保存しておきたいと思えるような表紙が出来れば、雑誌が売れないなんて現状は回避できたのではないかしら?・・と思ってしまったわ。改めてデザイン力の素晴らしさ、そして何より色褪せることのない"作り手の情熱"を十分に堪能致しました。充電完了!

091002.jpg土井典 / 個展「不確実な少女達」

豊満なる凶器

「不確実な少女達」と銘打たれた土井典(どいのり)さんの個展が銀座のギャラリーで開催されていたのだけど、扉を開けた瞬間久々の濃厚な空気感が・・これは一筋縄ではいかないと直感したわ。

まず目を奪われたのは存在感たっぷりのお人形たち!どのレディ達もかなり体型はふくよかで、1度見たら忘れられない衝撃を受けるほど個性的で美しい。ひとりひとりの表情は大人びているものの、どこか女性特有の"可愛らしい意地悪さ"を感じるの。身につけている装飾品や衣装のデザイン、そして何よりも色の組み合わせが絶品よ。

東洋とも西洋とも近未来的とも懐古的ともいえるボーダーレスの卓越したセンスに、ただただ口をあんぐりするばかり。

「硬いバラ飾り」というレディはお腹が開閉自由になっていて中に"秘密"を忍ばせているのだけど、嫁ぎ先が決まってしまったので中身は見ることが出来なかったの。身につけていたガーターのターコイズブルーとパープルという色使いは、アナスイもビックリの怪しさと可憐さを表現していたわ・・お見事!。

展示されていた線画やコラージュも女心をくすぐるものばかりで、繊細な部分と良い意味でずぼらな部分が見事共演しているの。ちょっと背景の紙が浮いていたりして「あれっ?」と気になる部分があるけれど、中の絵はミリ単位の緻密さで描かれている・・そんなアンバランスさがグッとくるわ。

特に「やられた!」と思ったのは魔法のように丁寧にボールペンで描かれた、猫のような女性とバタフライの装飾品が組み合わさった「個性的なつもり」!人間は誰でも人とは違うと思うことで優越感を得る、特に女性はそうよね。そんな皮肉さえもこんな風に表現されるなんて・・一体どんな作者なのだろう、と思いつつ、会場にいらした年配の女性に声をかけられ話していたんだけど、なんとその方が土井さんご本人だったのよ!・・ひいい。

土井さんは以前澁澤龍彦氏や寺山修司氏にレディを嫁がせたという、この世界ではかなり著名な方だったの。でもご本人は実に気さくでサバサバした気持ちの良い方で「お名刺ちょうだい!」と言われた時、何だか嬉しくなっちゃった。人が生み出す感性のエネルギーって本当凄い。たまにはこんな洗礼を受けるのも悪くないわ。

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2009 10-12
アリス百花幻想 / 展覧会
4人展 / 銀座界隈隈ガヤガヤショー
土井典 / 個展

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